祥福寺報

神戸市 祥福寺僧堂,河野太通住職の 震災直後の活動報告「祥福寺報」です.

VAG の移川さんと谷口さんが インター V ネット「現地からの声」に掲載 したものを再編集しました (金田記).


目次


平素の托鉢に報恩ともに涙を流そう

河野師家に聞く ■河野師家との一間一答は次の通り。  老師はRACKの活動を通じ、かねて仏教者としての利他行の実践を強調 してこられた。昨年、花口大学学長に就任するに際しても〃自末得度先度他〃 の立場を学生に向けて強調している。  河野師家東南アジアの仏教は”小乗”といわれるが、日本の仏教は観念的 大乗で、ミャンマ・、タイの小乗仏教は実践的小乗でそれを比べれば、ミャ ンマー、タイの小乗仏教はずっと大乗的だ。  カンボジアの難民キャンプで黄色い衣の僧侶が托鉢をやっているのをもて 驚き、憤ったことがある。しかし聞いてみると、難民たちが清僧に供養て功 徳を積めるよう、自分たちの一人前の食糧配給を遠慮して、托鉢をしている のだという。  日本の社会ではそういうわけにはゆかぬ。我々も被災者ではあるが、幸い 被害は軽微だった。今はせめて日頃、托鉢して喜捨を頂いたお返しをさせて 頂く。決して、恵まれた立場の者が弱者に施しをするのではない。お返しさ せて頂くのだ。それが我々の菩薩道の行であると思う。  ともあれ、このような大災害に際して物資的支援もさることながら、直ち に精神的な対応ができる姿勢が日常的にできているか。我々も今回の震災へ の対応では、様々な点で学ぶところが多かった。  宗門の対応のありかたについては不足を指描する向きもあった。 <河野>ともすれば我々禅僧は「肩あって着ずということなく、ロあって喰 らわずということなし」「めそめそするな、頑張れ」と精神論をやりかねな い。しかし、現実に寒さに震え、飢えにせめられている人をどうするかだ。  現代の心理療法では打ちひしがれた人に「頑張れ、頑張れ」というのは逆 効果だという。平時にあって単に気が緩んでいる相手に「頑張れ」と言うの とは訳が違う。そんな人を前にすれば、一緒になって涙を流すほかない。  宗門の教義の勉強、坐禅修行がこういう非常時にどう役立つか。その意昧 で、雲水には 「今は非常時で特殊な雑務をしているのだとは思うな日頃の修行の延長だと 考えろ」と話している。誤解を恐れずに言えばいい修行をさせてもらってい ると思う。  それと、修行で得た境涯を社会的現実のなかで役立てるには、心理療法な ど科学的な素養も必要だ。大学の仏教学科のカリキラムも検討する余地があ るのでばないか。  今後、どういう援助が最も必要だろうか。 <河野> 一般論としては、ボランティアとして被災地に入って逆に被災者 に迷惑にならないよう、自分たちに必要なものは自分たちでまかなえる〃自 己完拮〃型のボランティアがいちばん有り難い。  仏教者の課題としては、現実に被災者に通用するような精神的なケア、カ ウンセリングができるか、どのようにやってゆくか、だろう。 (平成7年2月23日 中外日報より)

山門に追いかけられ

 地震の日は1月21日まで行う”夏末”の大接心の最中だった。いつもの 通り朝4時起床、動行に続き粥座が済み、午前5時半頃から雲水連は7時よ り行われる河野住職の臨済録の提唱を受ける準備のため祥堂で講本の下見を していた。  住職は部屋に居た。午前5時46分、”地震だ!!”この春、入門した最 も若い雲水が大声で叫んだという。その後、電気が消えたが、まだ真っ暗な 中を異常がないか内部外部を順次点検して回った。暗がりの中で山門が倒壊 しているのが見えた。ただ心配していた二重塔が大丈夫なので助かった。や や明るくなって境内を綿密に見て歩き、あっちこちでヒビ割れや瓦のズリ落 ちなどがあり、大変なことになったと感じた。長田区の方で確認できただけ でも七カ所から火の手が上がっているのが見えた。  後に聞いた話だが、同日は”粗ゴミ”を出す日だったので雲水の一人が山 門を通ってゴミ袋を手に石段を下りる途中で地震が起きた。振り返った時、 ものすごい音と共に”山門が追いかけてきたニ・・・”と感じたという。  提唱には毎回、十名位の常連の方が近隣から聞きに来る。その人たちの安 否も気にしつつ、明るくなってきたが提唱は中止し、室内の片付けを始めた。 結局17・18の両日は土塀の片付け、屋根にビニールシートをかける作業 に忙殺された。

鐘の音が心を癒した

 19日からは、一人暮らしの老人や近隣の家々の安否、檀家家屋倒壊の救 助などを昼間の坐祥を中止してやった。それでも朝のお勤め、タ方の参禅は 欠かさず、暁鐘・昏鐘は絶やさなかった。18日朝、暁の鐘が響き渡るのを 聞いた近所の夫人連が「祥福寺さんの鐘の音を聞いたら、アタフタせず、心 を落ちつかせシッカリ頑張らないと駄目だとつくづく思った」と語っていた。 そうした声を聞くにつけ、僧堂の者も勇気が湧いて雲水全員が力を合わせ救 助活動・復旧活動に当たる。 (平成七年二月十五日文化時報より)

避難所のトイレ掃除

 21日からは近隣だけでなく縁故のある被災寺へ瓦礫の片付けに赴くと共 に、神戸市の災害対策本部や福祉人材センターと連絡をとりつつ、ボランテ ィア活動を開始。一人暮らしの老夫人が営む寮の片付け、壊れた家屋からピ アノを取り出す作業、通院中の医院から薬を貰って来て本人に届ける等の他、 対策本部の要請で、避難所になっている公共施設の内、五カ所の避難所(小 学校)の廊下・トイレを雲水達が毎日巡回で掃除し続けている。 禅堂の1月末は、いわば年末に当たる。3日で雪安居が終り、31日は一堂 に会しての茶礼、2月1日は決算、2日が役寮の交代という重要な時期。だ が、朝のお動め、タ方の祥問答、昼間の救助活動に全力をあげている。

若者のハート見直す

 マスコミの情報を通して思うのは、焼けたり、倒壊した寺院や社寺の映像 が殆ど出なかった。だけど寺は彼岸には当寺だけでも六百人以上の人々が集 まる半公共施設である。人なき建物や避難所、駅、公会堂の倒壊や火災現場 ばかりがクローズアップされているのは撮り手の映像づくりが、全て宗教に 関心の薄い人によって行われていることも一因ではなかろうか。  しかし河野住職は言う。これまで、現代の若者には批判的な気持ちがない ではなかったが、大震災に於ける彼らの行動を見ていて改めて見直した。ハ ートは大変立派だ。よくやっている。ただ言葉遣いやエチケット、挨拶など が出来ないので損をしている部分があるのでは…と。  まだ苦難の日々が続くだろう。だがいつの日か神戸が、西宮が、淡路が見 事に復輿した時、若い雲水達をはじめ、多くの若者連のボランティアが大き く支えになったことを、住民連の記憶からは決して消えることはないに違い ない。 (平成七年二月十五日文化時報より)

アジアの友支援の会 神戸”RACK“より

 この度の阪神大震災により被災され、ご不幸にもお亡くなりになられた方々 のご冥福を祈り、謹んで哀悼の意を表しますとともに、被災されたすべての皆 様に対して、衷心よりお見舞いもうしあげます。  RACKではこの度の震災に対しまして、祥福寺僧堂の雲衲を中心に神戸市 災害対策本部と市民福祉人材センターを通しての救援活動、長田区長福寺仮設 テントでの炊き出し、3月18日には、阪神大震災で亡くなられた外国人の方 の慰霊法要などの活動を行っておりますが、ひき続きまして近隣各位皆様には いっそうのご協力をお願い申し上げます。  またRACKでは、震災により孤立状態で避難生活を送っている東南アジア の方々を支援しております。お困りの方はご連絡ください。  ひたすら、皆様のご安泰を祈念仕り、旦つ一日も早く平穏な日常が回復いた しますよう至祷致します。 ●お知らせ  只今。RACK事務局長、中野多聞(福海寺)の本堂、庫裏が全壊し事務機 能がまひしましたため、事務局を一時祥福寺に移しましたのでお知らせ致しま す。

※御連絡は下記まで.
〒652 神戸市兵庫区五宮町 22-17 祥福寺僧堂, TEL 078-361-0379,FAX 078-361-3115
(C) ボランティア支援グループ (VAG)
HTML 化 : 95-8-13,最終改訂 : 96-2-22.

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