掲載新聞
2003年12月23日(火)産経新聞
ボランティアに人生かける
康 秀峰(カンスボン)(55)=大阪生野区
「今の日本には愛が足りない」
「ボランティアは血液と同じ。各器官に血液が回らなければ身体はやられる。この血液が満遍なく行き渡るようになれば住みやすい社会になるはず」−。ボランティアにかける思いは熱い。こうした情熱をはぐくんだ土壌は幼いころすでにあったという。
大阪市生野区で在日二世として生まれた。極貧の生活の中、六歳のころから、足が不自由な弟の世話をし、目が不自由な家主に一日の話を毎日語ってあげた。
空手、テニスと運動に駆け回っていた高校時代に突然、リウマチにかかった。全身に激痛が走り、床に就くしかなかった。天井を見上げる日々の中、「歩けるようになったら人を助けるために人生をかけよう」と誓った。
大阪朝鮮高級学校を卒業。差別に耐えられず、職を転々とし、ある化粧品会社に営業職として入社。断トツの売り上を上げ、収入も増えた。が、売り上が悪くて解雇された仲間を助けるためにお金を使い、さらに会社を辞め、仲間たちとともに化粧品会社を立ち上げた。会社が軌道に乗ったところで一線から退いた。
二十二歳のとき、弟に自立のための技術をつけさせようと、一緒に書道を習い始めた。すると自分が夢中になってしまい、二年後には書道教室を開くまで上達。教室は書道を教えるだけでなく、さまざまな人の悩みを聞く場にもなり、百五十人もの人が集まってきた。
平成四年に同胞企業がマンションの一室を提供してくれたのをきっかけに、「コリア文化ホール」を開く。
「お互いの違いを認めながら、民族、国境、ハンディを超え、だれもが共に生きる社会をつくろうというのが趣旨です」
書道教室や人々の文化交流の場となり、六年には「コリアボランティア協会」と改称し、本格的にボランティア活動を始めた。
翌七年の阪神大震災では、韓国民団と朝鮮総連とともに、被災地での炊き出し、訪問介護を実施。お年寄りを励ますため全国の子供たちとの文通支援なども行った。活動資金に、家を購入するためにためていたお金を残らずつぎ込んでしまい、「妻にあんたほど変わった人はいないとあきれられた」という。
その後も活動を続けていたが、十二年に部屋を提供してくれていた企業が倒産。近くのワンルームに引越しして、活動を縮小せざるを得なくなった。そのうえ、弟が他界。自身もリウマチが悪化して自宅療養を余儀なくされた。
しかし、こうした困難をスタッフらの協力で乗り越えながら、協会の活動は続けられている。今年一月には、協会が大阪弁護士会の「人権賞」を受賞。また、自身の書が、フランスで権威をもつ「ユニヴェール・デザール誌日本版」に二点掲載。今夏にはルーブル美術館に展示された。
今春、生野区社会福祉協議会の理事にも選ばれた。外国籍では全国で初めて。「日本の内なる国際化に役立つならばという思いで引き受けました。」
現在も自宅で療養中だが、相談に直接訪れてきたり、かかってくる電話はひっきりなしだ。
「息子に『書道に絞ったら』といわれるが、『困っている人を見捨てて生きるんやったら切腹する』と言い返すんです」と笑い、「今の日本は、お金ばかりが先に立ち愛が足らない。もっともっと愛を磨かないといけない」と訴える。
来週には活動を再開する予定。再び介護の現場に立つため、腕力を鍛え直す日々を送っていると言う。
(銭本隆行)
コリアボランティア協会 平成六年に生野区で設立。障害者や高齢者の生活支援を中心に、在日コリアン、日本人などが一緒に民族、国境を超えたボランティア活動を実施している。
七年の阪神大震災では、被災地での炊き出しや仮設住宅の高齢者への訪問介護などを行った。現在は専従スタッフ七人、登録ボランティア約八千六百人(日本人約七千人、在日コリアン約千人など)。
支援金のあて先=郵便振替・00920−6−29408 コリアボランティア協会か、UFJ銀行 生野支店 普通口座 3703577 コリアボランティア協会
問い合わせは、同協会 電話(06・6717・7301)へ。
掲載新聞目次
コリアボランティア協会ホームページに戻る
新ホームページ:
http://korea-v.com
新e-mail:
korea-v.com-info@tulip.ocn.ne.jp
(c) korea v,2000