掲載新聞
1994年1月28日(金)大阪日日新聞
ボランティアに国境はない
全国組織「コリアボランティア」協会 30日発足
身体・精神障害者らを介護
38度線越えた“善意の輪”
ボランティアに国境はない−。大阪市生野区在住の書道家、康秀峰(カン・スボン)さん(四五)が三十日、身体や精神に障害を持つ人たちへの介護を目的とするボランティアの全国組織「コリアボランティア協会」を発足させる。在日韓国、朝鮮人を中心に、日本人やその他の国の人たちも交えて、北は北海道から南は沖縄まで約百八十以上の団体がすでに産道を表明しており、最終的には三百を超す勢い。国内でこれまでの規模を持つボランティア組織は他になく、康さんは「“三八度線”はもとより、国境や人種、民族を超えた善意の輪を広げたい」と意気込んでいる(報道部・山崎)
北から南から180団体が賛同
東京など支部の申し出も
「ボランティアというのは、ぼくにとっては自然なこと。もの心ついた時から弟が障害者で、彼の面倒を見てたんです。ボランティアしなければ生きてる気がしないんです」
ボランティアのことに話が及ぶと康さんは常々、穏やかな口調でこのように語る。
きっかけは昨年の十一月。風邪をこじらせて寝込んでいた康さんのもとに同じ在日の友人から一本の電話があった。
「韓国席の少年(孤児)なんやけど十六歳になると孤児院を出なあかんらしい。行き場がないから親代わりになって助けてや」
病床で得たアイデア
康さんは、自ら代表を務める在日や障害者のための施設「コリア文化ホール」で、その少年を引き取ることを決めた。少年の先行きが心配だったからだ。「戦後四十九年たつのに、在日への差別は根強く、介護を必要とする障害者は数多い。日本で一番足りないのはボランティアであり、我々がそれに取り組むことによって社会に貢献すれば、日本人が在日に対して持つイメージも変わってくるはず」。病床の中で思いを巡らせていた康さんの頭の中に一つのアイデアが浮かび上がった。
「コリア文化ホールを開設して約一年半。国境や民族を超えた『人の輪』の活動をさらにおし広めたい:
十二月。各方面の団体に「コリアボランティア協会」発足についての構想を伝えたところ、約一カ月間で百近い団体が賛同を表明。朝鮮総連、民団など北、南の関係団体もそろって参加し、善意の輪は三八度線をも超えた。
普段は反目し合っている団体もボランティアという一つの目的のために賛同を快諾した。在日団体だけではなく、日本人ジャーナリストや南アフリカの平和活動家も加わり、国境や人種、民族の垣根を超える運動に発展。現在、参加団体は百八十を数え、ボランティアの登録者も百人を超えた。東京や和歌山、兵庫、広島の賛同者からは支部としての活動を申し出る連絡もあった。
こうした流れの中で、康さんは同協会の発足日を今月三十日に決定。賛同者一同をコリア文化ホールに集め、盛大なセレモニーを開くことにした。当日は、韓国、朝鮮双方の華やかな舞踊が繰り広げられ、参加者全員で協会の発展を祝うという。
協会の運営費は、主に康さんの収入に頼っており、十万円以上の赤字が出る計算だが、将来的には費用面で援助してくれる賛助会員を募ることによって、財政的にも安定を図っていくことにしている。
コリア文化ホールには、高さ二メートル近い額に飾られた康さんの毛筆書きがある。書かれている文字は「夢」。
「みんな助け合って楽しく生きよう。在日であろうが、障害者であろうが、社長さんであろうが、同じ人間なんやから」
康さんの描く「夢」が、賛同した人たちが描く「夢」が、もうすぐ現実のものとなる。
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