掲載新聞
2003年7月5日 東洋経済日報 タリ
ルーブル美術館にハングルの書
在日2世の康秀峰さん
朝鮮半島平和の願い込める
書にボランティアの香りを込めて
在日コリアン2世の書道家、康秀峰さん(55)のハングル文字の書が、パリのルーブル美術館で7月3日開幕した日仏現代美術博に初めて展示された。画面いっぱいに表現された平和を訴える康さんのハングルの書は大いに注目を集めている。同博は、フランス美術アカデミーが日本の絵画や書道、陶芸作品などを集めて毎年開いているもので、今回日仏から出品された作品は700点。康さんの出展は、同博実行委員長を務めるフランス人建築家、クリスチャン・ラングロワ氏の推薦で実現した。康さんに書に込める思いなどを聞いた。
「ルーブルでの展示依頼を受けたとき、最初は冗談だと思ったほど驚いた。推薦してくれたクリスチャン・ラングロワという人は、10年ほど前から私のファンで、ぜひハングルで出品するよういわれた」
このラングロワ氏は今回の展示会の委員長でもあり、文化大国フランスでは有力者の1人だ。今回、ルーブル美術館に展示された康秀峰さんの書は、たて135センチ、横69センチの紙にハングルで「トンイル」(統一)、「サラン」(愛)、「イムジンガン ハナ」(イムジン川は一つ)と書かれている。どんな思いを込めたのだろうか。
「平和をどう表現しようかと考えているうちに1カ月たった。トンイルのルの払いを川のように伸ばした。鳥も魚も自由にいけるようにリムジン川は一つでなければならないし、統一は愛で実現しなければならない。特にサランという字に力をいれた。ハングルを知らなくても、字を見て愛であることがつかめるように、ぼかしを入れた。これは技術的に難しく、墨を10倍に薄めてハイスピードで書いた」
フランスは世界から8000万人の観光客が集まり、ルーブル美術館は最大の観光資源だ。康さんは「ルーブルを訪れる世界各地の人に、言葉は分からなくてもこの書で平和のメッセージを訴えたい」と述べる。
7月5日までのルーブル美術館での展示の後、ウィーンの新世紀宮廷芸術祭(7月7−12日)でも展示される。
「ルーブルでの展示会とこのウィーン祭で賞をもらうことが決まっている。また、ウィーンでの宮廷会員にも選ばれた。大変高く評価してもらってありがたい。ウィーン祭の後、欧州各地で巡回展示される計画もあると聞いている。この書が世界平和につながる小さな役割を果たせるよう願っている」
何度も何度も平和を強調する康さん、阪神大震災の時、康さんの書をみて自殺を思いとどまった被災者が何十人もいたという。多くの被災者を励ますため自費をはたいて2000枚を書いたという逸話の持ち主だ。
「民族・国境・ハンディを越えて」を掲げ、協会発足当初より、南アフリカの孤児支援、阪神大震災を始めとするトルコ、台湾などへの震災支援、さらには北朝鮮への食料支援など、活動は内外を問わず、幅広く実践してきた。韓国との交流も深く、99年12月には安山工科大学「社会福祉研究会」、2000年1月には「安山福祉財団」とも姉妹縁組を結び、その間「朝日構成文化事業団」や市民団体と提携して、2度にわたり、韓国全国に車椅子百台以上を寄贈するなどした。
氏の書の営みは常にボランティアと共にあり、教室には、悩みを訴える人など、国籍やハンディを超えて様々な人々が出入りし、さらには自らも出向いて、障害児の学童保育所や作業所でも出張教室を開いて、書の指導やケアを行った。
氏は書に込める思いは常に「癒しの心」であり、多くの子弟がボランティアの香りを求めて集まって来るようになり、92年7月には、感銘を受けた在日の篤志家よりフロア(100平方メートル)の無償提供を受け、「コリア文化ホール」を開設、書道教室と共にフリースペースとして地域に開放した。その後ボランティアニーズが急速に拡大し、94年1月に「コリアボランティア協会」を発足、本格的にボランティア活動とネットワーク作りに乗り出した。
氏の書には、戦争の対極にある「ボランティアの心」と同時に、南北統一への思いが深く刻まれており、38度線に老人ホームや福祉施設を建てたいという願いと共に、2003年7月には「リムジンガン ハナ」(国境を流れる川は1つの意)、「サラン」(愛)などの書がパリ・ルーブル美術館やウィーン・造形美術アカデミーなどで展示されることになり、各々で受賞を受けるなど国際的にも高い評価を受け、加えて6月には「芸術総典」に掲載・発行され、日本全国の公立高等学校(約2500校)の美術教育教材としても取り上げられた。
氏の活動は常に地域と共にあり、高齢者・障害者・在日コリアンをはじめとするマイノリティの密度の高い大阪・生野における長年のボランティアへの信頼度も高く、外国人では初めて「大阪市生野区社会福祉協議会・理事」に選任された。
前述した篤志家の倒産で2000年9月依頼、立ち退きのより避難所での手狭な活動を余儀なくされ、財政的に赤字であるが、さらなるニーズに応えていくためにはケア・スペースの確保が急務であり、センター建設基金を呼びかけている。
▼ カンパの送り先 郵便振替(00920−6−29408 コリアボランティア協会)まで、連絡先06・6717・7301。
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