掲載新聞 2003年4月25日 東洋経済日報
2003年4月25日 東洋経済日報

転換期の在日
ボランティアに人生を捧げる
弟の障害から学ぶ


 在日コリアンが4分の1を占める大阪市生野区に生まれ、貧しい家庭と足の不自由な弟の面倒を見るため、介護に明け暮れていた在日2世の康秀峰さん(55)。
 「小さい頃から、近所の苦しんでいる子を見たりしてたから、大変と思ったことはなかった。その頃はみんな貧しくって、自分のことでせいいっぱいやったからね。思えば、障害のある弟を介護しながら、僕は弟からいろんなことを学んだ。僕にとって、弟はボランティアの先生やった」
 弟に職を持たせようと、習字教室に通ううち自らも上達、やがて書道教室を開く。
 「弟のおかげで、僕も今では書家と呼ばれているけど、書道教室をやってても、生徒と一緒にボランティアやってたよ。在日にはなかなかいい職もなかった。みんな手に職つけたかったから、本当に、日本人も在日コリアンも外国人も、たくさんの人が教室にごったがえしてたね。弱った人のかけこみ寺になってたんかなあ」
 無償のボランティアに感銘を受けた在日の企業家により、100平方メートルのスペースの無償提供があり、フリースペースとして、1992年7月に「コリア文化ホール」を設立。  「僕がずっーと1人でボランティアやってたのんを見てくれてた人いたんやね。書道のために使ってくれって言われたけど、僕、ずっとことわってきた。でも、今まで書でつながってた人に申し訳ないでしょ。みんな、免許出してあげな。だから文化ホールから始めた。朝鮮料理をつくる会とか、ハングル手話教室や日本の華道の教室とか。それでも僕は、みんなを集めてボランティア活動してたね」
 その後、ボランティア活動に賛同した300以上の団体、個人の支持を受け、94年1月、同所に「コリアボランティア協会」を設立した。
 「書道家から、いきなりボランティア協会を作ったら、文化人はみな散ってしまった。マスコミの人さえ、『夢物語や、“コリア”の名前でつくれるわけない』って言いはるし、白人の友達は『何でそこまで日本人にこびるんや』って言うてきた。僕は電話しまくった。『コリアボランティア協会つくりたい』『賛同して下さい』って。日本に住む在日コリアンや少数者の生活は、日本自体が良うならなぜったい良うならへん。だからだれでも困っていたら、民族・国境・ハンディをこえて、誰にでもボランティアできる協会が必要だとおもった」

書でルーブル展示

 一般からの広い支持とカンパに支えられた地道な活動が高い評価を受け、今年の1月6日に、大阪弁護士会より「人権賞」を受賞。
 「うちは法人化はとっていない。協会が出来てからずっと、会員制はとらないことにしている。いろんな状況の人がだれでも参加できるためにも、金額のきまりはつけたらあかんと思う。でも、毎月の活動費としては100万はかかっている。カンパの金額はさまざまやけど、ちょっとずつ登録会員は広がっている。けど、今のままやったら、専従に世間並みの給料が出されへん。金銭的にも安心してボランティアでききる環境づくりが大切やと思う。それと、社会のシステムもそう。制度や法律が、自分らの『良いことをしたい』という思いに『くさり』をかけているところがある」
 「「人権賞」を」くれたんは、コリアボランティア協会が、人権にかかわる活動を地道にやってるから、ほめてくれたということやね。法のはざまで苦しんでいる人のそばには、いつもだれかがいっしょにいてあげなあかん。今度の賞は、コリアボランティア協会のスタッフとここに来ているボランティアの人たちに、喜んでボランティアに行けるチャンスを与えてくれたということやと思ってます」
 ボランティアの一環として、書道を通して、障害を持つ青少年を指導、愛の香り漂う「書」は、テレビの題字などにも度々取り上げられ、この7月には、パリのルーブル美術館にも、初めてのハングルの書を含め、数点が展示され、その後ヨーロッパを巡回する。
 「小さいときから弟の世話をしてきて、そのお陰で、ボランティアにも目覚めた。書道家になるきっかけもその中から生まれてきたし、その心が筆にこもって、一つ一つの作品が生まれてきたと思う。今回、日仏の現代美術博で、実行委員長のクリスチャン・ラングロワが、僕の作品を見て、“ボランティアをする中で生まれた美しい作品”といってくれたのはとてもうれしい。世界の人たちがみんなひとつになって、愛の香りに満たされることを願って、一つ一つの作品を書いている。これらの作品を、戦火の下で平和を願っている人たちのにも届けたい。世界中の苦しんでいる人たちに、ボランティアの愛の香りを届けたい。世界中の平和を望む人たち、声を出せない人たちとともに…」

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