掲載新聞 2002年12月26日(木)朝日新聞
2002年12月26日(木)朝日新聞 大阪弁護士会の人権賞を受けるボランティア団体代表
康秀峰(カンスボン)さん(54)
ボランティア大国・ニッポンが夢。「愛があれば戦争は起きない」


 在日朝鮮人2世として大阪市生野区に生まれた。22歳にころ、見習いをしていた喫茶店に正式に雇われることになった。履歴書を渡すと、経営者や従業員の態度が急によそよそしくなったのが忘れられない。
 差別に耐えられず十数回転職。足が不自由な弟の自立につながればと、一緒に書道家に師事した。筆を握ると無心になれた。26歳のとき、生野区内の実家に小さな書道教室を開いた。
 就職に失敗した若者、離婚で子どもと別れた女性、家に引きこもる障害者……。教室には在日だけでなく、様々な境遇の日本人もやってきた。「差別された側が怒るだけでは何も変わらない。怒りを愛に変えれば、いつか心は通じる」
 94年、コリアボランティア協会を設立。在日の企業家から無償で借りたマンションの一室で6年間、障害や高齢者のデイケアを続けた。「民族、国境、ハンディを越えて」と説き、野宿者やストーカー被害者の避難所としても開放した。阪神大震災では炊き出しで被災地を走り回った。全国の子どもに呼びかけて集めた励ましの手紙は1万通を超えた。
 震災から2年で活動資金が底をつく。昨年9月には持病のリウマチが悪化し、いまは自宅療養を続ける。一人息子の君(9)からは「もうボランティアはやめて」と言われた。
 だが、来春には再出発を期す。「父親の背中を見て育ってほしい。それが教育だと思う」
 文 歌野清一郎
 写真 高橋一徳

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