掲載新聞 2000年1月18日(火)毎日新聞
2000年1月18日(火)毎日新聞 芽吹く
被災地をこえて
阪神大震災から
福祉ノウハウ学びたい


 韓国・ソウル市郊外。外気は氷点下だ。今月10月、韓国式床暖房で暖かくなった養護学校教諭、林鍾豪(イムジョンホ)さん(39)宅で打ち合わせが続いた。大阪市のボランティア団体「コリアボランティア協会」代表代理の鄭炳熏(チョンビョンフン)さん(48)とひざを突き合わせ、話に熱が入った。
 林さんが指導している安山興業専門大学の社会福祉研究会の学生ら17人が今月24日から約1週間、阪神大震災被災地のボランティア活動見学のため来日し、同協会が受け入れる。神戸市長田区の復興住宅での訪問介護の同行や在日1世のお年寄り訪問など、メニューは盛りだくさんだ。
 同協会は、在日韓国・朝鮮人の多い大阪市生野区で、「すべての社会的弱者の救援」を目的に、書道家の康秀峰(カンスボン)さん(51)が震災の前年の1994年に設立。当初は生野を中心に高齢者、障害者の介護などを行っていた。
 震災を機に長田区の仮設住宅や復興住宅での介護活動を続けており、兵庫県西宮市で被災した鄭さんが被災地活動の責任者を努める「コリア…」と銘打っているが、会員約6000人のうちの8割が日本人で、下院の国籍は10カ国以上と、大きな広がりを見せている。
 こうした活動の韓国のマスコミも興味を示し、昨年8月、KBS(韓国放送公社)の番組で活動が紹介され反響を呼んだ。林さんは学生に番組のビデオを見せた。韓国社会でも核家族化が進み、高齢者問題は注目されえちる。林さんたちは、放映された震災被災地でのきめ細かい高齢者福祉ノウハウに驚いた。
 福祉研究側の行動は素早かった。鄭さんと連絡を取り合い、昨年10月には支援センターを設立。財政的に困っている同協会のためバアーを開き、資金10万円を寄付した。同12月には、「姉妹縁組式」を行うほどの関係になった。
 縁組式では、康さんが書で「夢」という字を書き、学生らに贈った。何かあると、いつも若者たちに贈る字だ。康さんは「福祉という言葉で、国を越え、海を越えすべての人が統一できる両国の若者が夢を持って生みを越えてもらいたい」と期待する。
 ツアーを引率する林さんは「韓国では施設介護が中心で、コリアボランティア協会が訪問介護先に弁当を差し入れたり、病院に見舞いに行くなど、個人的な介護をしていることに学生らも感銘を受けた」と話す。
 11日に韓国から帰国した鄭さんはあくる日から神戸に入った。復興住宅のお年寄りを訪問し、一人一人に年始めの手紙を渡した。被災地でも震災の風化は言われている。「ボランティア活動でも最も大切なことは継続。日本側にとっても今回の交流が刺激になって、新しいボランティア元年にできれば」。5年にして始まる海を越えた交流にかけている。【野原靖、写真も】=おわり
 コリアボランティア協会は、学生受け入れなどのための資金協力を呼びかけている。郵便振替00920・6・29408「コリアボランティア協会代表 康秀峰」。

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