1998年10月5日(月)読売新聞


コリアボランティア協会 代表
康秀峰(カン・スボン)さん50
日本人とコリアン
「共生」の道を探る
フランク・トーク

 二十四時間体制で障害者や高齢者の介護に取り組む「コリアボランティア協会」(生野区)が発足して五年目を迎えた。在日韓国・朝鮮人と日本人のスタッフが一緒になって行う活動は、生野区内から阪神大震災の被災地へと広がった。「震災を風化させないで」と呼びかけ、著名な芸術家からの提供で始まったチャリティー美術展は、来年、雲仙、奥尻での開催を計画している。代表の康さんに、協会の活動などについて聞いた。
(聞き手・北岡 学ぶ)

● 違いを認め合って
−協会結成のいきさつは。

 日本人とコリアンが、国籍の違いを超えてボランティア活動に立ち上がることで、それまでの対立する関係から、違いを認め合って生きる『共生』の関係を生み出したいと考えたのです。障害者を抱える家庭の難しさや高齢化問題は、日本人とかコリアンとかの区別なく降りかかってくる問題。一緒に助け合っていこうや、という気持ちが始まりでした。全国に約五千人いる登録ボランティアも、介護を受ける人も、その八割が日本人です。

−ボランティアを始めたきっかけは。

 一つは、四歳年下の弟が生まれつき足が不自由で、小さいころから弟の世話をしていたこと。もう一つは、子供のころ住んでいた借家の家主で日本人のおばあさんに、その日一日の出来事を話していたことでした。おばあさんは目が不自由で、家に閉じこもっていたためか、すごく喜んでくれて、「初めて友達ができた」と言ってくれました。その時、人に喜ばれることは自分にとっても喜びなんだなあと知ったわけです。

−被災地での活動内容は。

 主に週三回の仮設住宅の訪問ボランティアと、小中学生と被災者の文通の橋渡しです。たまたま縁があって神戸市長田区の西代仮設住宅に通い、お年寄りの話し相手になっているのですが、昨年からは、全国の小中学生から寄せられた励ましの手紙を渡したり、逆に変じを受け取ったりすることで、被災者のことを『忘れてへんで』とメッセージを送っています。手紙のやり取りをつづった文集も三冊目ができました。

● 震災、風化せぬ
−被災地の現状はどうですか。

 「もう震災は終わった」という雰囲気もありますが、実際は、仮設住宅に残された人たちほど、震災のダメージから立ち上がれず、精神的にも経済的にもしんどくなっています。だから、少しでも勇気づけることができたなら、と思っています。

−「コリア」の名称から協会への偏見も多いと聞きましたが。

 『差別を受けている側がなんで差別する側を助けるんや』とか、逆に『在日なら来ていらん』とか言われました。でも、そんな感情を乗り越えようというのが、この団体の趣旨なんです。いつも言うてるんですが、ここは実験の場や、と。日本人とコリアンが共に生きて行くための実験場やと思うんです。

−活動をしていく上での悩みは。

 会費制をとらず、寄付だけで運営しているので、活動資金のことが最大の悩み。二か月に一度のニュース発行もしんどい有り様です。被災者を支える皆さんの善意をぜひお願いします。

メモ 一九四八年、生野区生まれ。大阪朝鮮高級学校卒業。書家としても知られ、高麗書道連盟会長も務める。震災後は、収入源だった書道教室を閉じて、ボランティアに専念。イラストレーターの黒田征太郎氏らの提供で、全国六か所で巡回チャリティー美術展を開催している。カンパのあて先は、郵便振替「00920・6・29408」コリアボランティア協会へ。

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