掲載新聞 1996年6月17日(月)高知新聞
1996年6月17日(月)高知新聞

闘う顔 今を読む
コリアボランティア協会
康秀峰(かんすぼん)さん(48)


 元慰安婦への謝罪問題、公務員採用試験の国籍条項撤廃、サッカーW杯の日韓共催決定と、日・韓・朝問題がクローズアップされている。在日の人たちとの関係をいま一度見直すべきだ、と時代が迫っているようでもある。在日、日本人の区別などないボランティア活動を続ける在日の康秀峰さん(48)=大阪市生野区桃谷、コリアボランティア協会代表=は「日本人ボランティアを派遣してくれ」などといった差別に対してこぶしを振り上げることもなく、奉仕の積み重ねで人々の心の垣根を取り払ってきた。ご多分に漏れず活動資金難だが、賛同と支援を訴えながら共生の社会を目指し、情熱の火を絶やさない。

共生の社会づくりへ情熱

障害者自立を応援
−どうして奉仕活動を始めたのですか。


 私、一人で三十五年間ボランティアをやってきました。弟が足に障害があり、小さい時からずっとボランティアというか世話を続けてきました。
 十九歳で二人の孤児の親代わりとなって一緒に暮らしていました。ある日、繁華街でやくざに袋だたきに遭っているサラリーマンがいて、助けようと私、レンガを両手に持って闘いました。空手をやっていましたし、やくざにだけがさせて、警察に連行された。少年院送りになりかけたところ、孤児の面倒を見ていたことで裁判官が情状酌量、釈放してくれたこともあります。
 ここの協会事務所は、ビルのオーナーの在日の社長さんが「何かいいことに使って」と言ってくれました。人が入って来やすいよう文化ホールという呼び名にして仲間を増やしました。
 障害者の自立を応援しています。一緒に寝泊まりして面倒みます。二カ月に一度は子供たちと親とともにハイキングへ行きます。障害のある子供がいると、家族だけで外出しても自由がないし、他人に怒られる。大勢だとそれがないし、親たちに友情が生まれます。
 民族、国境、ハンディを超えたサッカーチームをつくっています。障害者も一緒になって楽しもうというものです。評判になって、今はよその地区の少年サッカーチームが試合を申し込んできてくれます。

−阪神大震災の被災地への支援も活動の一つですね。

 地震の日は私、障害者を預かって協会事務所で泊まっていました。ここでもトイレにひびが入るくらいの揺れ。翌日からメンバーが車に薬と水を積んで神戸や淡路島へ行きました。五十人くらいのメンバーが動いたでしょうか。別に神戸のメンバー三十人くらいも懸命に動きました。大阪から単車や自転車でも行き、ある日なんかメンバーの一人が夜もなかなか帰ってこない。やっと午前二時半に帰ってきて、ほっとしたこともあります。
 今の状況は人災です。国民の半分くらいは復興が終わったと思っているでしょうが、仕事がない、行き場がない人が大勢。自殺者も出ている。経済大国というのにどうしたことでしょううちのメンバーは今も週三日、仮説住宅や空き地に暮らす被災住民を訪ねています。そんな私たちにも心を閉ざす人もいます。
 ボランティアは一過性では駄目です。神戸はこれからが大事。地震直後に来て「また来る」と言って帰ったボランティアの約束を、信じ待っている被災住民は多いのです。

愛の力が差別なくす
名誉や地位はいらない

「朝鮮は断る」
−周りから差別的な目で見られたこともあると聞きました。


 在日への差別というのは歴史的にひどいもの。南アフリカのアパルトヘイトなど単純に思えます。電話で介護依頼がありましたが、「朝鮮やったら断る」。その日は眠れませんでした。行政も表彰など名誉はいっぱいくれますが、そんなものはいらないし。しかし、権利と保護は私らにくれない。団体がつくる協議会にも入れない。
私たちは命がけでボランティアをやってます。在日から、「日本人に奉仕するのは卑怯(ひきょう)だ。奴隷だ。裏切り者」と脅されたこともあります。正直言って怖かった。でも、地位や名誉を捨ててやっているのを分かってくれ、いつでも自分たち無事ですね。
私は北朝鮮、事務局長の鄭炳熏(チョン・ビョンフン)は韓国。だから民団(在日本大韓民国居留民団)と総連(在日本朝鮮人総連合)とも話ができて、地区の運動会の共催を実現したり、ふつうなら考えられない橋渡しもしています。
差別に対して力で闘うのは簡単です。しかし、それは憎しみを生み、次の世代に闘いを生むだけです。違うんです。パンチより十倍の努力がいりますが、愛の力で差別や偏見はなくなる。専従メンバーの給料は一カ月たったの一万円。それでも、愛の力があるから、メンバーが増え、賛同してくれる人もいる。
<カンパの送り先>郵便振替00920−6−29408、コリアボランティア協会

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