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世界貿易機関閣僚会議に関する世界雨林運動の声明
(WRM Statement to the WTO Ministerial Conference Saettle Novenber 30 -
December 3, 1999)
世界貿易機関(WTO)と森林の将来 (翻訳協力 吉田朗子さん)
1992年に開かれた地球サミットでは、各国政府は世界の環境が危機にありそれを救うための何かをせねばならないということに関して非常に理解を示していると思われた。数多くの重要な会議で生物多様性、砂漠化そして気候の変化(温暖化)について審議され、一方森林保護についてはUN
Commission on Sustainable Developmentで取り上げられた。その随所で経済への関心も見受けられたが概ね環境への配慮とバランスが取れているようであった。しかし、今になってWTOはこのシナリオを反対勢力が十分な反抗をしないまま繰り下げ、七年の間、環境保護のためになされた脆弱だけれども前向きな足跡を消し去ろうとしている。
森林に関して、WTOは、環境保全の規約によって脅かされる企業の利益を保護する側へ回ったのである。少数の権限の強い企業が各々の政府を介して、なんとか彼らの提案を搾り出した。 「もし森林保護が利益の減少につながるならば、それは不法だといわざるをえない。企業の利益は何にも増して優先されなければならず、現行の国内及び国際的環境法規は『反自由貿易』的であるとみなされ制裁が加えられるであろう。」
企業にとってのWTOでの達成項目は、林産物における数多くの「貿易の障害」を除去せよである。そこで言われている障壁とは、各国が自国の経済か、もしくは環境、あるいは両方を守るために使う道具である。例えば、輸出入における関税が切り上げられれば林産物の価格は吊り上げられ、消費を減少させる。明らかに、現行の過度の消費を促す政策にとっては、不適当であろうが、これは森林にとっては好ましいことであり、企業にとっては逆である。そこで、企業は林産物に関する更なる関税引き下げを提案しているのである。
同時により多くの仕事と輸出による利益を生じるような森林を保護するために政府が取りうる政策は数多くあり、補完的な政策を同伴した上での木材輸出規制法(log
export bans)の類のものは森林にも人間にも有益である。繰り返せば、このような施策は森林にとっては好ましいが企業にとってはそうではない。それゆえに、これらは自由貿易に対抗する「非関税措置」とみなされるべきであり、禁止されるべきであるという提案なのである。認証制度(certification
schemes)や再利用、廃棄物回収を規定する立法でさえも自由貿易に対する障壁とみなされ、不法だとされてしまう。
上記のような主張が、森林が恐るべき比率で(特にひどいのが熱帯地域や亜寒帯地域であるが)消え続けているという世界的な認識があるにもかかわらず罷り通っており、もし人類が未来への展望を捨てないのであれば、このような風潮は阻止される必要がある。環境破壊の直接的な原因は製材(logging)、農地拡大(agricultural
expansion)、公害、道路舗装(road building)、採鉱(mining)、原油搾取(oil exploitation)、そして水力発電を含む。そのような直接的な原因の背後にある根本的な原因は、不公平な土地所有権の構図
(inequitable land tenure patterns)や、地域共同体の法的権利の認識不足、社会的排除(social
exclusion)であり、増加し続ける取引量は過剰消費につながり、国際的な貿易システムを台無しにする。製材は、現在重要な森林の喪失における原因の最たるものとしてみなされていて、しばしば農業や牧草地への転換を引き起こす。森林の破壊を止めようとしたいくつかの段階での試みにもかかわらず、全体的な状況は好転していない。
来るべきシアトルでのWTOとの会合では、貿易に関する交渉も行われるであろうが、この状況をさらに悪化させる恐れがある。貿易自体はそれ自身森林にとって善くも悪くもない。問題は森林保全政策が良好に発展し実行されているか、また地域共同体の法的権利が尊重されているかでどうか、そして土地への公平なアクセスが可能であるかどうかである。しかしながら、更なる林産物その他の自由化は、現在森林の破壊が進んでいる地域に不十分な森林保全策を推しつけることで、持続不可能な製材用の伐採や更なる森林の崩壊を呼ぶことになろう。それは農業や大規模植林、パーム栽培場などといった、森林からの転換をも促進させ更なる社会的不公正を招くことになろう。
来たるWTOとの交渉のための提案はまだ用意されていないが、次のような課題が交渉の場で持ち出された場合、森林は影響を受けることになるだろう。
さらなる林産物に対する税率引き下げ。
この議題は、EU主導の非農産物への関税引き下げに関する交渉で取り上げられるか、またはアメリカ主導の森林分野におけるATL(関税自由化の促進)についての交渉で取り上げられるであろう。輸入関税の引き下げは、現在高税率が課されても、なお消費を増加させている家具材やベニヤといったような林産物の消費レベルを、さらに上昇させることで連動して起こる問題をも悪化させる。これは一部の南の地域(インドネシアやマレーシアといったような)の経済には有益であり得るが、もし、認証制度のような他の措置―これは、またWTOが、貿易に関する非関税障壁として撤廃しようとしているものである―が伴わなければ、これらは同時に、それらの国々の森林に大きな負の影響を与えることになる。アメリカ政府がまとめた、森林へのATLの見解に関する衝撃的な調査では、製材用の伐採をインドネシアとマレーシアでは2%から4.4%、スウェーデンとフィンランドでは7%から11%へと増加させるつもりだということである。
森林保護のための非関税措置。
潜在的に、「非関税措置」(NTMs)の削減の論議が議題に上っている。これらの交渉は、現在の森林や森林にすむ人々を守るために一部の非関税措置を取り除くために行われる。非関税措置に汚名を着せ、削除または禁止される可能性のある活動は、エコ・ラベリングや森林認証、輸出入制限、木材輸出規制、再利用及び廃棄物回収とそれらへの助成金の給付などである。これらのような政策のほとんどは、森林や森林に依存している共同体を保護するためにあるべくしてあるのであって、そのような政策の選択はWTOに阻まれるべきでない。
農業分野の自由化。
農業分野については、いわゆる「ビルト・イン・アジェンダ」の部分であるが故、明確に交渉が行われるであろう。一部での農業自由化は環境的にも社会的にも有益であるが(例えば、production-related
subsidiesの減少)、その他の政策は森林にとって大きな衝撃を与えると予想されている。例えば、パーム椰子のような分野の関税引き下げは、パーム栽培場の拡大から森林を守ることに対して、圧力を増し妨げることになる。最も焦点を当てるべきは、森林が農業の自由化で受ける衝撃へのより深い理解を必要とすることなのである。
投資。
投資に関する政策については、すでに制限付でWTO内の合意(a limited WTOagreement)があり、EUでは更なる投資に関する規約(investment
rules)への交渉が推し進められている。もし、さまざまな分野にわたる同意がなされ、それが投資の領域まで達するならば、森林分野における国内投資家への制限や統制を行うための政府の能力をさらに抑圧することになる。例えば、国内投資家への地元の林産業との提携(それは責任所在の明確化や技術の進歩、輸送手段の向上のためである)を要求することを禁ずることになりうる。
政府調達。
EUは、交渉中のアジェンダの中に盛り込ませるために政府の買い上げに関する法規についてもまた、論議を進めている。中央政府と地方議会は、それらのもつ購買力を難なく利用することで森林問題の緩衝剤となりうる。これは資源を維持できるように生産された木材やリサイクルペーパーの使用を条件として指定することを含んでいる。このような行動は、区別をはっきりさせるべきものである(discriminatoy)と考えられるであろうゆえに、もし政府の買い上げに関する規律がWTOの介入を受ければ違法なものとなってしまう。
上記の全てについて、シアトルでの閣僚級の会談では、話し合われるべきであり、全世界中の何千という市民社会からの代理人という立場から、彼らの声に耳を傾かせるために声高に異を唱えるべきである。戦いは貿易そのものに対してではなく、利益者集団とその環境が作り出す利益者共同体の優勢に対して挑まれるべきである。人間や自然は、地域や世界規模の環境への影響をないがしろにした利益の達成のためだけの「資源」ではない。森林は企業の利益可能性を増すように伐採されるのを待つために立っているのではない(Forests
are not stands of timber waiting to be logged to increase corporations'
profitability.)。それらはたくさんの人々の生活の場なのであり、数え切れないほど多くの動植物達の住処であり、気候の安定を保つ重要な要素であり、新鮮な水の供給源であり、土壌を保護するものなのである。それらを保護することは、全ての企業の経済的利益につながるに違いないのだ。
参加国の大部分が、すでに地球サミットアジェンダ21で是認され、行動を起こすための森林に関する提案の政府間協議(the
Intergovernmental Panel on Forests' Proporsals for Action)で調印済みの、生物の多様性に関する協定(Convention
on Biological Diversity)や気候変化に関する協定(the Climate Change Convention)と同様な事柄に関して、シアトルで協議するのだろう。しかしながら、WTOやその加盟国はいまだに、貿易自由化が森林の環境体系や森林とともにある共同体に与える潜在的な負の影響を無視した選択をしている。彼らは、森林や森林を住処とする人々に影響を与える、木材の貿易自由化や他の分野の自由化の環境的・社会的衝撃に関する監査を怠った。さらに、彼らは材木やその他の分野の貿易自由化に関して、市民社会を十分に巻き込むことも怠った(一般人に関心を持たせることを怠った。)。
来たるべきシアトルでの大臣級の会談(Ministerial Conference)の交渉の席でで取り上げられるたくさんの問題は、ある生活習慣上において生活の質の向上につなげる手段の一つというよりも、むしろ貿易の自由化を優先順位の上位に掲げることにより、それ自体が終焉を迎える(もみ消される)形で経済に関する提案に反映されるだろう。
それゆえ我々は、厳格で、権力に依存しない、個人参加のできる監査で、どの貿易関連の政策が森林や森林に住まう人々にとって好ましいか否かが見極められるまで、いかなる貿易に関する交渉も合意されないことを要求する。もし政府が彼ら自身の言うとおりに森林の危機を救おうと思うのであれば、この要求は「自由貿易を阻むもの」としてではなく、森林や森林にすむ人々の生活の保護を互換性のあるものとして、貿易が目指す将来のレベルを達成しうるための森林保護への予防策であるとみなしていただきたい。同時に、各国政府は現存する生物の多様性に関する国際規約を遵守するように努めることと、貿易関連の合意がそのような国際協定の数々のねらいに矛盾しないと保証することを要求する。
人類の未来は危ういところにあり、政務に携わる者達は、誰の利益(彼らの人民や森林、あるいは企業、そして環境破壊)を守るべきであるのかを肝に銘じなければならない。
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