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民営化という大波
サラ・グラスキー
Multinational Monitor (September 2001)より訳出

目 次 コスト回収と民営化 水を得るための代償 水道民営化の圧力 水と民主主義を求めての闘い

二〇〇一年七月、世界銀行(以下、世銀)はガーナに対する11億ドルの新規構造調整ローンを決めた。しかし融資実行の前に、世銀はガーナ政府に対して七つの「優先されるべき行動」の実施を求めた。

その中には、「電気と水にかかる料金をそれぞれ95%、96%ずつ上げ、管理費をカバーする」ことが含まれていた。

「コストの全額回収」への努力は民営化への前提条件となる。民間企業は、システム管理費と利益が出るだけの料金設定でなければ、経営に乗り出さないからだ。

世銀の圧力によって、ガーナ政府は「ガーナ水道会社」を二つの(まだ決定していないが)多国籍企業に賃貸し、上水道事業を任せる計画を立てた。世銀は、ガーナの国別援助戦略で融資条件の一つとして水の民営化を挙げている。

二〇〇一年五月、この動きに反対するため「水の民営化に反対するガーナ全国連合(NACP)」が結成された。全てのガーナ人に安全で安い水を提供することを求めるキャンペーンと連動した動きだった。

NACPの結成メンバーの1人アメンガ・エテゴ氏は、首都アクラの住民のほとんどが米ドル1ドル未満の賃金しか得ることが出来ず、その多くが安定した雇用を保障されていない、と話す。4月、バケツ一杯の水の価格が以前は平均400セディだったのが800セディ(米1ドルが7000セディ相当)まで値上がりした。

これは世銀が要求した「必要条件」に応じるためである。提案された「民営化」案で、さらに水道料金は上昇するだろうと見られている。

「世銀やガーナ政府は現在の水道料金を『市場価格より安い』と考えているが、すでにガーナ人が払える限界を越えている」とアメンガ・エテゴ氏は言う。

「どうやって水の民営化にともなう「市場」価格を払うことができるでしょうか? 安全な水への市民のアクセスが難しくなるにつれ、不潔な水などから起こる病気などが増えることになるでしょう。」
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コスト回収と民営化

このガーナのケースは、上下水道の使用者負担を増加し、水道事業を民営化するという世界銀行・IMF政策の代表的な事例である。

世銀は、途上国政府のような貧しく、債務を抱えた国は上下水道事業をできない、としている。世銀の構造調整ローンや上下水道へのローンはコストの全額回収や水供給の「経済的な価格設定」を要求している。

この要求では、水供給にかかる全コスト(管理運営費、資本投下、これまでの設備投資分の負債)を消費者の使用料金でまかなうべきだということになる。しかしこのやり方だと、消費者の負担が重くなり、貧しい人々や社会的弱者にとって安全な水は手の届かないものになってしまう。

水の費用が高くなると、女性や子どもへの影響が大きい。家事の担い手である彼女らは、もっと遠くまで行き、もっとたくさん働かなければ水を得ることができなくなる。しかも多くの場合、その水も汚染された川から汲んでくる。こうして家族は、水か食べ物、学校、健康のどれかをあきらめざるをえなくなる。

世銀・IMFは、投資者たちにとって安定した高利益の市場にするために、水のコスト増加を要求しているのである。多くの国で、世銀の官僚たちは公営の水道事業はコストがかかりすぎ、効率的でない。しかし、それを民営化すると途上国政府のかかえる債務を払うための資産となるとしている。

「効率的な水管理のためには水を商品としてあつかうことが必要」と世銀側はウェブサイトで発表し、「水道や下水道の民営化は、高利益、サービス向上、サービス拡大のための素早い投資を生み出す」と説明している。

構造調整ローンや水道・下水道ローンを受け取るためには、民営化(「国際業者」とのサービス契約、管理契約を含む)などのコンディション(条件)を受け入れなければならない。水道に携わる多国籍企業はかなり限定されており、フランスのビバンディ社、スエズ・ボウイェーズ社、テキサスのエンロン社などが挙げられる。ガーナの水道事業に応札している五社のうち、二社(スエズ・ボウイェーズ社とサウール社)の年間売上高だけでガーナの1999年のGDPをはるかに上回っている。
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水を得るための代償

世銀はコスト回収と民営化を進めれば、より多くの人が清潔な水や衛生的な下水道へのアクセスできるようになると言う。「公的サービスが失敗したので、世銀が民営化を助けている」と世銀は都市の上下水道に関する政策ペーパーで述べている。「私たちは途上国の調整システムを助け、アドバイスをすることで彼らが公正な取引を行い、投資家と消費者双方の利益になり、本当に困っている人たちのニーズに応えるように考えている。」

多くの途上国では人口の大多数が、水道設備の「枠」外に住んでいる。基礎となる施設の拡大は必要不可欠である。しかし、それと同時に村や近隣のコミュニティでは清潔な水を得るために、民間のトラックなどから直接水を買うという方法をとっている。

トラックから直接水を買う方法だと、水道パイプから水を得るよりもずっとコストがかかる。その余裕がない人たちは川や湖、沼などから水を得るしか道はない。コミュニティや家庭の中には「不法」に水道パイプから水をとって使っている者もいる。

しかし世銀は、水道料金を値上げすれば、民間企業がパイプを広げるという動機や財源になるだろうと主張している。

「多くの国では、中産階級の消費者が補助金で安くなった水道料金を払う。そしてそのつけが政府にまわる」と世銀水道部のリーダーはいう。「公的部門も水を無駄にし、40から50%もの量を水漏れや水泥棒によって失っている。そして、必要な人員の二倍も雇用しているため、コストもつりあがっている。この政府の無駄使いこそが、水道を都市スラムや小さい村などに供給できない原因なのだ。最も貧しい都市スラムでは、貧困を理由に水を公共に保つ必要があると指摘されるが、公共事業からは何のサービスも受けていないのが実状だ。多くの人々が水を民間のトラックから高いお金で買わなければいけないのだ。」

しかし、民営化に反対する側は、世銀の計算は間違っていると主張する。まず、水の値段が高くなれば、貧しい者は水の使用料を減らすか使わなくなるかしかない。ガーナの例では、値上げによって水の使用量が激減した。人々は多くの場合、公共施設に出かけていって水を無料やわずかなお金で得るか、子ども達が遠くから水を運んだりしていた。

「人々とともに闘う」ことを哲学として掲げているガーナ大学では、大学に供給される水を地域住民が使うことを許している。人々は何時間もかけて水を求めて大学にやってくる。

清潔な水が手に入らなければ、コレラや下痢を伴う症状など水によって感染する重い病気にかかる危険性があることを公共衛生局は認識している。WH0は、下水道設備がないことが原因で、年間200万人あまりもの人々が死に至っていると推測する。

「世銀による融資条件としてガーナ政府が実施する全コスト回収政策によって、状況はますます悪化するだろう」とアメンガ・エティゴは話す。

南アフリカでは1999年に実施された水道料金徴収で、Kwagulu−Natalの貧しい人々は汚染された水に頼らざるをえなくなった。公共衛生局では、2001年のコレラ大流行の原因は、水料金政策にあると見ている。

ラテンアメリカでは、コレラは一世紀近くもなりを潜めていたが、また流行の兆しを見せている。

また水料金の上昇は、水道の恩恵を受けていない人々にも打撃を与える。民間の水供給トラックは公共水道施設から水を買っているので、値上げはその値段にも影響するのである。

一般に「漏水」と定義されるものの中には、貧しい人々が生きていくために使う手段、違法行為も含まれている。だから世銀の「漏水」を減らす政策は貧しい者の水へのアクセスをも無くしてしまうことになる。「違法」な手段によって水を得ている人々が、水にお金を払わなければならなくなる。

最後に、多国籍水道企業が水供給をどこまで広げるかどうか、特に値上げ価格を払うことのできない貧しい地域に広げるかどうかはかなり疑わしい。

逆に、途上国に進出をはじめたばかりの多国籍企業は、社会的環境の恵まれていない地域を苦しめている。

インドネシアでは、スエズ社とテームズ水道会社が水料金からの不当利益によって非難されている。

南アフリカでは、スエズ社が不当に高い値段をつけて儲けているのに、自治体は最低賃金さえ支払えないままだという抗議の声があがった。サウア社(ボイウェー社の子会社)には、レソト高地水道プロジェクトに関して12もの汚職、贈賄容疑がかけられている。

世銀職員と途上国の市民グループは次の一点では同意するだろう。それは、「水道部門の改革は必要である」ということだ。途上国の、それも中央集権化した水道設備しかない国の現在の水道管理システムは、これまで市民に安全で安い水を供給したことがない。

しかし、世銀が要求する消費者負担の増加・民営化は、市民の安全や必要ではなく、対外債務の解決だけを考えているものだ。

ガーナの市民グループは代替案として、地方分権、自治体同士のパートナーシップ、政府援助の継続、新しい財政案の導入、市民参加、地域主導の水道管理を求めている。

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水道民営化の圧力

水の民営化についていかに疑問があがろうとも、世銀とIMFはこのプランを推し進めようとしている。

40カ国のIMFローンを調べると、2000年度には12カ国の債務国に対して水の民営化かコスト回収を要求していることがわかった。

IMFと世銀の分業で、世銀は主として「構造」問題、すなわち国営から民営化に責任をもつことになっている。IMFの融資条件によって水の民営化やコスト回収が要求されているような国々では、世銀によって「水部門」に関わるさまざまなセクター、財政面、管理面、技術面への介入があるだろうと見られている。

一般的に、IMFが水の民営化やコスト回収などの方針を出しているのは、アフリカ諸国や最も小さく貧しく、最も債務を抱えているような国々に対してである。アンゴラ、ベーニン、ギニア・ビサウ、ホンジュラス、ニカラグア、ニジェール、パナマ、ルアンダ、サントーメ・プリンシーベ、セネガル、タンザニア、イエメンが、その対象となっている。

IMFの融資条件は、国によってカテゴリーが異なる。IMFが最も重視するのは達成能力の基準をみたしているかどうかである。達成能力の基準によって、融資が撤回されるか、遂行基準にあわせて融資を継続するかどうか決まる。つまり水の民営化はIMFによる構造調整の到達度をはかる物差しにすぎない。

IMFによって水の民営化プログラムを強く求められている国々では、IMFとその国の官僚だけが市民の知らないところで「秘密の話し合い」をしたに違いないのだ。

IMF、世銀、そして途上国政府側も公的に話し合いの内容を発表することはない。ローンの合意ができ、サインもすみ、IMF理事会が承認すると、はじめてIMFのウェブサイトに「実施文書(LOI)」という形で発表される。

熱心に、そして時には必死に、途上国政府側は、IMFの出した要求をのむことが多い。援助がうち切られたら、たちまち金融危機に陥ってしまうからである。

2001年3月IMFは、水の民営化はこれから世銀など多国間開発金融機関の中心課題となると主張している。そうなれば、公的な関与がますます難しくなることを示している。

しかし、仕事の組織的分業にかかわらず、政策上の権限に変わる気配はない。世銀の文書はタンザニア、モザンビーグ、ウガンダにたいするコスト回収の要求が一層厳しくなったことを示している。

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水と民主主義を求めての闘い

水の民営化をめぐって多くの国で人々が闘いはじめている。ボリビア政府は1999年、世銀によって求められた構造調整プログラムに含まれる水の民営化をコチャバンバ市で行うことをみとめた。

政府は、イタリアのInternational Water Limited 社とアメリカのBechtel 社が主導する企業コンソーシアムに、水道事業を40年間任せることを許した。

この新しい水道会社は直ちに水を値上げし、最低賃金が一ヶ月65ドルなのに、一ヶ月20ドルもの水道料金が求められた。水道会社はさらに許可証を買うことを求め、これは貧しい人たちの水へのアクセスさえも脅かすものだった。

多くの抵抗グループ、La Coordinadora などがコチャバンバでうまれ、水道施設を地域の手に戻すことを求めた。

何週間にもわたる激しい抵抗の末、2000年の4月、La Coordinadora は、民営化の契約を破棄させ、水道事業を地域の管理下に置くことに勝利した。La Coordinadora は世界で初めて、水の民営化に対する抵抗が実を結んだ実例である。

ガーナ人たちも世銀の水の民営化要求に対して抵抗を続けている。ガーナ政府が不正に行おうとしたエンロン社との契約を取りやめ、さらに他の会社との契約もやり直されようとしている。

世銀の官僚からの情報によると、ガーナ政府はIMFと世銀の要求に従っておらず、ガーナ水道会社を二つの違う多国籍企業に受け渡し、さらに地区をプロジェクトAと、プロジェクトBに分けている。今までで、プロジェクトAでは四社が入札し、プロジェクトBでは五社が入札している。四社が両方に入札しており、つまり五社しか入札に参加していないことになる。

「民営化の波の方向を変えることが必要だ」とガーナのアメンガ・エティゴ氏はいう。

「国は自分で水の確保や衛生に対する解決法を見つけだし、公共部門でそれを実施しなければならない」

「私たちはIMFに対抗する政策をつくり、公平で社会責任をもった水管理への新しい方法を見つけなければ行けない。ガーナのように貧しい者と失業者も多い国では水の民営化は決して国の利益にはつながらない。水は政府が責任を負うべき公的サービスなのだ。」

(翻訳 西島真希)

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