「海外農業情報」からの引用です。米国での水問題です。 2002年10月29日の情報ですが、転送しておきます。
Sub:米国、021029、水資源供給確保に向けた動きが活発化
<要約>
水資源を州北部やコロラド川に依存する南カリフォルニアでは、長期的な安定供給を確保すべく、様々な取り組みが行われているが、このたび、農業地域から都市部への大規模な水利権売買が関係者間で合意に達した。
このほか、砂漠地下への貯水プロジェクトは挫折したものの、海水淡水化プラントなどが各地で計画されている。また、11月の住民投票では、使途を水資源確保・保護事業とする34億ドルの債券発行の可否が問われている。
<本文>
■[供給が限られるなか需要は拡大確実]
水資源に乏しい南カリフォルニアでは、節水対策が進んでおり、市民の意識も高くなっている。庭などへの散水に再生水を活用しているほか、使用水量の少ない食器洗い機やトイレの導入を進めるためのインセンティブも用意されており、人口1人あたりの使用量は他地域と比べて少なくなっている。
ロサンゼルスタイムズによれば、ロサンゼルス市の1人当たり水使用量は年間140ガロンで、ソルトレイクシティ(284ガロン)、デンバー(228ガロン)、ラスベガス(307ガロン)など他都市を大きく下回っている。
それでも人口の増加が水需要を拡大する。南カリフォルニアの人口は、2000年の1,700万人から2020年には2,100万人にまで増加すると予測されている。それにあわせて水の需要も増加が見込まれ、2000年の380万エーカー・フィート(以下「AF」)から、2020年には480万AFに達すると、南カリフォルニア都市圏水管理局(MWD)では予測している。
他方で、地域の貯水能力も着実に増加しており、貯水量はここ10年で倍増している。カリフォルニア州水資源局によれば、ここ2年は少雨が続いているが、今後数年間は給水制限等の事態に至る心配はないそうである。
ただし、長期的にみれば、水の供給体制には不安がある。南カリフォルニアの主要水源はいずれも地域外であり、北カリフォルニアとコロラド川に大きく依存している。このうち、コロラド川からの取水量は、2016年以降約18%カットされる予定である。カリフォルニア州の本来の年間割当取水量は440万AFであるが、これまでは520万AFの取水が許容されてきた。
ところが、水利権を持つ他の6州(アリゾナ・コロラド・ネバダ・ニューメキシコ・ユタ・ワイオミング)でも水の需要増大が見込まれるため、今年2月に協議が行われ、2016年以降は超過分の取水は制限されることとなった。
さらに、連邦政府からも、本年末までに取水量縮減に向けた具体的な対策を講じることができなければ、直ちに超過取水を制限すると圧力をかけられており、節水や水源多様化の取り組みが喫緊の課題となっているところである。
■[農業地域から都市部への大規模な水利権販売の合意が成立]
カリフォルニア州へのコロラド川の水利権は、その大部分を農業地域が握っている。当初割当分(440万AF)のうち都市部の水利権はMWDへの55万AFのみで、残りの385万AFはインペリアルバレー灌漑用水管理局(IID)などの農業地域が有している。
超過分の96.2万AFについては、MWDが66.2万AF、農業地域が30万AFとなっている。南カリフォルニアの水需要のうち農業用は1割程度に過ぎないが、水利権は既得権益化しており、需要の増加している都市部の水利権は少なく、かつ15年後には半減してしまうのである。それどころか、コロラド川からの取水を削減するための具体策を年内に示せなければ、来年にも都市部の水利権66.2万AFが使えなくなるのである。
こうした事情を踏まえ、南カリフォルニアの水供給を長期的に安定させるため、農業地域の水使用を減らして都市部に供給すべく、州政府や議員も含めて関係者間で粘り強い交渉が行われてきた。
そして、6年間もの協議の末、今年10月に関係する4つの水管理局間(サンディエゴ郡水管理局(SDCWD)、コチェラバレー水管理局(CVWD)、MWD、IID)で合意が成立した。
ただし、最終的には各々の水管理局の理事会での承認が必要であり、そのうちIIDにおいては、農地の休閑を余儀なくされる農民の不満の声や、休閑に伴う失業増を懸念(地域の失業率は現在でも20%に達している)する声もあり、理事会で否決される可能性も残っている。
合意の内容は次のようなものである。まず、当初の15年間は、IID地区内の農地の一部を休閑し、それにより生じる水の余剰分を都市部に転売する。この間、農地の水利用の効率化を進め、16年目以降は、休閑を解除し、都市部に販売する水は、当該効率化で捻出するという段取りである。
契約期間は75年間で、水の販売量は2003年の1万AFからスタートし、2018年に20万AFに達する。これはSDCWDの水需要の3分の1に相当する量といわれている。代価については当局からは発表されていないが、報道によれば、1AFあたり258〜400ドルが、SDCWDからIIDに支払われる模様である。
IIDには現在の販売価格との差額(1AFあたり240〜385ドル)分の増収がもたらされ、節水事業を行うほか、休閑を行う農家にも配分されることになる。
なお、一部の農家は、今後の節水対策を考慮すれば十分な額ではないとの不満を持っているようである。このほか、MWDも15年間で140万AFをSDCWDに販売するほか、CVWDに対してもIIDおよびMWDが水を販売するなど、多角的な販売契約となっている。
本件の実現に向けて、州政府・議会も様々な形で後押ししている。関係者の説得を行うほか、立法措置で規制緩和も行った。インペリアルバレー北部に横たわるソルトン湖は、1905年のコロラド川用水路決壊によって生じた内陸湖であるが、インペリアルバレーおよびコチェラバレーからの農業排水の流入と砂漠気候下での著しい水分蒸発により、海水よりも2〜3割も塩分濃度が高くなっている。
このまま放置すれば、魚類の死滅が予測され、それを餌としている水鳥への影響が懸念されている。休閑により、ソルトン湖への流入水量が2〜3割減少するとの見方もあり、州法で「完全保護種」に指定している4種への影響が懸念される場合には、本件の実施が困難となるため、州政府・議会は、当該4種を「完全保護種」のリストから除外し、代替措置を講じることで足りる「危険種」に指定変えする立法措置を講じて、本件実現に向けた熱意を示した。
■[砂漠地下への貯水プロジェクトは挫折]
他方で、モハビ砂漠の地下に150万AFの水を貯水するというプロジェクトが撤回に追い込まれた。このプロジェクトは、農産物製造業者のカディツ社が発案したもので、同社がモハビ砂漠に所有する土地を利用して、地下にコロラド川の余剰水を引き入れ、最大150万AFを貯水し、MWDに地下水を売却するというものである。
総工費は1.5億ドルで、同社とMWDが折半して拠出する予定となっていた。また、同社は、地下水の販売により、今後数十年間にわたり年間5〜10億ドルの収入が得られるはずであった。ところが、今年10月になって、MWDの理事会でプロジェクト撤回の議決が僅差で承認された。
プロジェクトが撤退に追い込まれた理由は、まず、コロラド川流域の近年の雨量減少により、計画量の水の確保が不透明となっていること、そしてもう一つは、微妙なバランスのうえに成り立っている砂漠の生態系に再生不能なダメージを与えるのではないかという強い懸念である。
後者については、今年8月末に連邦内務省が、監視強化により砂漠の生態系保護は可能との裁定を下していたが、州選出のファインスタイン上院議員も含めて反対派の声は沈静化しなかった。なお、プロジェクト撤回をうけ、カディツ社の株価は1ドルを割り込んでいる。これは、プロジェクト実施に伴う将来収入をあてに、多額の借入れを行っていた同社の返済能力が懸念されてのことである。
■[海水の淡水化プロジェクトも進行]
長期的な視点での水資源確保の観点から、海水の淡水化プロジェクトも各地で現実化してきている。今年10月には、ロングビーチ市水道局がMWDと協力して、市内の発電所の隣接地に淡水化プラントを建設する計画を発表した。
同局が持つ特許を活用し、従来よりも効率的な飲料水生産を目指し、2005年から日量10〜20万ガロンのテスト生産をはじめ、2009年から2万世帯分の需要に相当する9百万ガロンを生産する計画となっている。また、オレンジカウンティでも、淡水化プロジェクトが進められており、こちらは、2005年末を目途に、日量5,000万ガロンの生産プラントの立ち上げを目指している。
なお、11月5日の住民投票で、プロポジッション50が承認されれば、34億ドルの債券発行により、安全な飲料水確保のための事業などが行われるが、淡水化プロジェクトもこの恩恵を受けることができる。