チリのフロンティア・フォレスト
- このページについて
- 以下は、Chile's Frontier Forests: Conserving a Global Treasure の本文(1〜36ページ)を日本語に要約したものです。
情報を整理するため、英語の本文とは順序を変えています。また、絶滅の危機に瀕する動植物の名前(英語本文19ページより抜粋)は日本語訳が入手できず、ご迷惑をかけ申し訳ないのですが、殆どについてそのまま英語名で記載しています。
***英語原文について***
Neira, E, Verscheure, H. and Revenga, C. (2002).
Chile's Frontier Forests: Conserving a Global Treasure.(PDF)
(Accessed on July 02, 2002).情報提供 吉村 麻理さん
- チリのフロンティア・フォレスト 目次
- はじめに
- FF(フロンティア・フォレスト)の定義
- 各行政区における保護状況とチリのFFの現状
- FFの減少と植林地への転換、環境への影響
- 絶滅の危機に瀕する樹木種
- 原生林の劣化・減少の要因
- 道路建設
- チリの林業部門(林産物、官・民の役割、林業部門の変遷、法的枠組み)
- 林産物
- 木材品
- 林業管理における政府・民間の役割
- 1)政府
- 原生林に関するCONAF(林野庁)の権限
CONAMA (国家環境委員会-the National Commission for the Environment)
- 2)林業業界・貿易協会
- CORMA (the National Wood Corporation - 木材企業連合)
Association of Forest Engineers(林業技術者協会)
AIFBN (Forests Engineers Association for the Native Forests - 林業技術者原生林保護協会)
- 3)小規模土地所有者
- 4)NGO
- 林業部門の変遷(植林地増加の背景)
- 民営化による変化
- 森林に関する法律と違法伐採
- 「1931年森林法」
- 違法伐採
- 違法伐採事例
- チリにおける原生林保護システムとその問題点
- まとめ
- チリのフロンティア・フォレスト
Chile's Frontier Forests: Conserving a Global Treasure
- はじめに
このレポートは、Global Forest Watch (GFW)のチリ支部である、CODEFFとUACHの活動結果をまとめたもので、チリの原生林の重要性、原生林の状態(保護の現状も含む)、特に、初めて、チリのフロンティア・フォレスト(以下FF)の規模や分布状況について (1995年のCONAFのデータに基づき)、詳しく述べられています。
また、このレポートには、FFを含む原生林の劣化や植林地増加をめぐる様々な要因についても述べられていますが、これらの点については、急速に高まった世界的な木材・紙製品に対する需要が背景にあるものの、どちらかといえば、チリの森林管理・森林法などの国内的側面に焦点をあて、問題点を論じています。
- FF(フロンティア・フォレスト)の定義
チリにおけるFFとは、
1)面積が5000へクタール以上で、
2)チリ原産の(動植物)種が生育し、
3)林冠で覆われている範囲が森林面積の50パーセント以上で、
4)人為による影響を全く受けていない、あるいは、受けたとしてもほんのわずかにとどまっている
成熟した温帯林です。
チリのFFは、その地域固有の種が生息・自生する原生林の一部 (subset) で、3つの形態的特色、― 沿岸山岳地域とアンデス山系域、その間の、渓谷地域(valley area)― による植性的影響が見られます。
チリの自然環境は驚くほど多様性に富んでおり、北部には砂漠、南部には多雨林があります。また、チリには、世界にも殆ど残っていないフロンティア・フォレストの3分の1(450万ヘクタール)が存在しています。
チリには世界で最もすばらしいと評されている数種の植生が見られ、北中部には、チリ固有のヤシ林、硬葉林(より乾燥した気候に順応した植種)、また南部には、有史前のナンヨウスギ林、温帯多雨林、マオウヒバ属の常緑樹林(alerce forests)など、植生は多岐にわたっています。
温帯林は、生息する種の数に関しては熱帯林に及ばないものの、樹木種のサイズと寿命、生産性レベル、膨大なバイオマス量、またそれに呼応する炭素貯蔵力、および、固有性の高さにおいて非常に重要です。これらの森林は、世界で最も生産性に富んでいる森林に属し、さらに、膨大な炭素の貯蔵庫として地球の気候安定に役立っています。
チリの大部分の温帯林(FF)(第12行政地区以外)は河川の上流域や険しい山岳部に位置しており、河川流域の保護、土壌の安定、また、森全体に水分・栄養素をいき渡らせるサイクルの維持等、非常に重要な役割を担っています。
* *ナンヨウスギは樹齢1500年、alerceの中には樹齢3620年のもある (Lara and Villalba, 1993) 。
チリの原生林は、生物多様性だけではなく、原住民を含む地域の人々にとって、木材品、非木材品、木材燃料として重要で、生活に欠かせないだけでなく、自給経済の基盤となっています。(詳しくは後述の「林業部門」"林産物"の個所を参照下さい
- チリは、南米の南西に位置し、縦4300km横160kmで、国土は縦に細長く、面積は77万5000km2です。同国には、北から順に13の行政地区があります。
- 各行政区における状況
チリのFFは開発や産業活動の中心地には殆ど残っていませんが、南部に下るにつれ、より多くのFFが残っています。チリのFFの多くは険しい山の斜面や標高の高い山岳部にある為、特に(開発・伐採等) 人為による環境変化に敏感です。にもかかわらず、州政府や民間所有の保護地域はFF全体のわずか30パーセント未満です。
- 第6・7行政地区
第6・7行政地区では、FFは全て失われ、殆どあるいは全く人の手が加わっていない成熟した原生林が、わずかに残っているのみです。第8行政地区は、植林地への転換が集中している地域で、チリ全体の植林地の44.3パーセントを占め、チリの木材業界の殆どはこの地区に集中しています。この地区では、FFは1万7,624ヘクタールしか残っておらず、しかもそのうち、20パーセントしか保護の対象になっていません。第9行政地区には、15万4,527ヘクタールのFFがあり、60.8パーセントが保護されています。第10行政地区のFF(157万6175ヘクタール)は、チリに残存するFFのうちの9.4パーセントを占めており、いろいろな種の生息地ともなっています。にもかかわらず、この地区の26.6パーセントのFFしか保護されていません。さらに、同地区にある、沿岸山岳域特有の多雨林は、現在計画されている沿岸高速道路のため、分断される危険性が高くなっています。
また、同地区は、第8行政地区に次いで、植林地への転換や産業活動が盛んな地区です。規制施行の不充分さや新たな沿岸高速道路の建設計画が、この第10行政地区の森林にとって、主な脅威となっています。
第11行政地区はFFが最も多く残っている地域で、FFの面積は177万8428.3ヘクタール(保護されているFFは31.4 パーセント)です。第12行政地区にも比較的多く残っており、94万6930.5ヘクタールのFFがあります(保護されているFFは13.9 パーセント)。(5)
- FFの減少と植林地への転換、環境への影響
前述のように、第8行政地区と第10行政地区間の地域は、チリで最も生物多様性に富んでおり、事実、この地域には、南半球固有の、あらゆるタイプの温帯林が見られますが、この地域はまた、植林地への転換等が起こっている主な地域でもあり、FFは危機にさらされています。この植林地転換は森林破壊や皆伐の引き金となり、その結果、生物多様性が失われています。チリでは原生林の多くが皆伐され、植林地に転換されています。植林木の殆どは、チリには自生しない、外来のラジアータ松と数種のユーカりで、チリの木材生産は、これら早成樹種を利用しています。
また、チリの行政区の中には、小規模に分断された成熟した原生林(5000ヘクタール以下)が、絶滅の危機に瀕する小型の哺乳類・鳥類を含め、多くの種にとって、唯一残された生息地となっているところもあります。
特に第6・第7行政区では、この傾向が顕著です。しかし、残されたわずかな原生林は、将来、生体系を復元するための、重要な遺伝子の宝庫でもあるのです。
最近の調査によれば、チリの樹木種や陸生・水生の脊椎動物の多くが絶滅の危機に瀕しているとの報告がなされています。(下記の表参照)。主な要因は、FFを含む原生林の減少と分断化、河川の水量・水質の断続的変化、及び、森林の減少による、(野生動植物の)生息地の局地的な気候変化です。
- 絶滅の危機に瀕する樹木種
-The southern belloto (Beilschmiedia berteroana)
-The queule (Gomortega keule)
-The ruil (Nothofagus allessandri)
-The pitao (Pitavia punctata)-猫科:
Austral spotted cat (Oncifelis guigna), Geoffroy's cat (Oncifelis geoffroyi),
the colocolo or pampas cat (Oncifelis colococolo)-鹿科:
the Chilean huemul ゲマルジカ?(別名South Andean deer) (Hippocamelus bisulcus)-カワウソ科:
the southern river otter (Lontra provocax)-有袋類:
the long-snout rat-opossum (Rhyncholestes raphanurus)-イヌ科:
the Tierra del Fuego culpeo fox (Pseudalopex culpaeus lycoides)-両生類:
Darwin's frog (Rhinoderma rufum and Rhinoderma darwini-鳥類:
the Patagonian Conure クサビオインコ?(Cyanoliseus patagonus)
チリのFFの減少は、政治的・経済的・社会的・文化的要素が絡み合い、多様な要因が関係しているものの、主なものとして、都市化・産業化に伴う道路建設、森林火災、また、植林地への転換があげられます。
- 道路建設
森林内の道路や人が山の中に入っていくための小道は、森林保護にとって脅威となる危険性があります。こういった道路のや小道を利用して、地域の人々が薪の収集や土地の開拓、また、牧畜を行ない、森林の生態系にマイナスの影響を及ぼすからです。(例えば、薪の収集や牧畜は、幼木等下層植物を利用しますが、このことで、植物の再生を妨げてしまいます。)
第6・7、及び第8行政地区は、道路が密集し、残存するFFの面積もわずかで、道路建設と森林破壊の傾向が顕著に現れています。
しかし、この道路建設に関する問題は、チリ政府の政策の不充分さにも関連しています。
もし、チリという国自身が、包括的な森林政策の枠組みを持ち、この枠組みによって、持続維持可能な形で森林を管理し、森林資源を保護し、健全で公明正大な公的機関・法制度を有し、人々に環境教育を行ない、またその興味を引き出せば、道路建設は森林の生態系にとって脅威とはならないはずです。
森林の生態系に悪影響を及ぼすもう一つの要因は森林火災です。過去20年間に、毎年平均1万3,660ヘクタールの原生林が、殆どの場合、人為的な理由によって消失しています。事実、CONAFのレポートによれば、森林火災の原因は、自然発火は1パーセント以下で、28パーセントが放火、29パーセントが交通機関の事故に関連しています。択伐では、原生林の面積はさほど減少するわけではありませんが、森林の構造や構成を変えてしまい、森林に多大な悪影響を及ぼしています。例えば、択伐は、最も大きく健康で商業的価値の高い樹木種を伐採するのですが、この伐採により、森林に生息する種の構成や遺伝子の蓄積を変えてしまったり、また、機械を使って伐採をする際、森林の土壌や植物を傷つけたりします。森林の択伐は、植林プロセスの第一歩にしか過ぎず、択伐の後、皆伐そして植林が行なわれます。皆伐は、原生林の破壊・分断という、取り返しがつかないほどの影響を森に与えてしまいますが、さらに、その後、外来種を植林し、原生林を植林地に変えてしまうのです。
原生林の劣化や減少(植林地への転換も含む)は、急速に高まった世界的な木材・紙製品に対する需要がその背景にあります。
しかし、その他に、以下で述べますが、チリの森林管理の枠組みや法律自体が原生林から植林地への転換を促進してしまっていることやチリの森林の殆どが民間所有で、チリの森林保護体制が充分に機能していないことも関係しています。
チリの林業部門(林産物、官・民の役割、林業部門の変遷、法的枠組み)
林業部門の変遷とその影響、また森林法とその問題点について論じる前に、林産物と政府・民間の役割について概要を述べておきます。
- 林産物
- 木材品
チリの経済にとって林業は重要で、輸出全体の10パーセントを占めています。林業協会(INFOR)の統計によると(INFOR 2000)、主な林産物輸出品目は、植林地で生産される化学木材パルプ(39パーセント)、植林・原生林双方で生産されるsawnwood (挽立材) (8.8パーセント)とウッドチップ(3.8パーセント)です。輸出木材品のうち、最大の輸入国はアメリカで20パーセントを占め、次が日本で13パーセントを占めています。
非木材品とは、森林の生体系から人間が享受できる木材品以外の全ての物資やサービスのことです(Tacon, 1997)。人々は森林からいろいろな資源を得ていて、食物、医療品、繊維製品、樹脂、装飾用の花や茎葉、香水、染料、家畜用の飼草など、どれも森林に住む先住民や地域社会の人々の伝統的な知識と深く結びついています。中でも最も代用的な非木材品は、果物やナッツ、野生のマッシュルームや薬草で、国内・国際市場でかなりの収益をあげ、南部チリの地域社会に住む多くの人々にとって、自給経済の基盤となっています (Smith, 1995)。
- 林業管理における政府・民間の役割
林業部門に携わっているのは、1)政府(いろいろな州政府機関を通じて)、2)林業業界・貿易協会、3)小規模の土地所有者、4)非政府機関 (NGO) です。
- 1)政府
政府の主な役割は、原生林と植林地の管理、法律の施行、SNASPE (家自然保護システム)の運営です。CONAF, INFOR, CONAMA が森林管理における主な政府機関です。林業セクターの運営方針は、大蔵省 (the Ministry of Finance) と農務省 (the Ministry of Agriculture) により決定されています。農林省は、CONAFとINFOR (the National Forest Institute- 森林協会) を管轄しています。
- 原生林に関するCONAF(林野庁)の権限
原生林に関するCONAF(林野庁)の権限は、a) 林業セクターに関する活動は有益な選択であるという概念に基づいて、小規模の土地所有者による原生林管理を促進させること、b) 原生林に関する法律を実施すること、c) チリの自然遺産を再生し保護することです。INFORは効率的な森林資源利用の技術に関する情報を伝えたり、そういった技術を開発することで、林業関連の公的機関と民間セクターを支援しています。INFORの役割は、a) 森林資源と土地利用に関する情報を更新すること、b) 林産物の種類を多角化すること、c) 国内消費の増加および林産物の輸出を促進することです。
CONAMA (国家環境委員会-the National Commission for the Environment)CONAMA (国家環境委員会-the National Commission for the Environment) もまた、チリの環境規範及び規制を設定し、施行することにより、森林の利用と保護に携わっています。しかし何よりも、この政府機関の役割で重要なのは、環境影響評価を行なうことです。このシステムで、全てのインフラ (水力発電プラントや製材所建設などの産業プロジェクトから大規模な森林経営プロジェクトを含む) の環境に対する影響が評価されます。このシステムに基づき、CONAMAはプロジェクトの認可が下される前に、その施行に際し、いろいろと条件を課すことができます。
- 2)林業業界・貿易協会
業界は、広大な森林を所有し管理するという事を通じて、重要な役割を担っています。また、林業セクターの工業化により、林産物の輸出を促進し、チリの国内総生産の増加にも貢献しています。
- CORMA (the National Wood Corporation - 木材企業連合)
全国的な企業連合で、木材業界における産業開発の向上を目的とし、政府関連の事柄に対し、業界代表としての発言力、多大な政治的影響力もあり、植林経営に携わる大企業の重役の主導で組織されています。
Association of Forest Engineers(林業技術者協会)この貿易協会は官・学、その他、国内全ての林業セクターの技術者より構成され、技術者の利害を代表し、メンバー間の協力や科学的・技術的改善等を目的としています。
AIFBN (Forests Engineers Association for the Native Forests - 林業技術者原生林保護協会)非営利組織で、目的は、原生林の管理・保護の促進を、政治的・学術的レベルで行ない、またその(原生林の管理・保護に関する)能力を構築することです。このため、林業技術者による、原生林の持続維持可能な利用、政策の立案、また、原生林の管理と保護に関する人々の意識の向上や能力構築に関する活動を調整しています。
- 3)小規模土地所有者
多くの小規模土地所有者が森林面積の大部分を所有していますが、彼らは主に、薪を集めたり、冬の間、家畜のための避寒地として森を利用しています。NGOの主な目的は、森林管理(forest stewardship)を進め、自然資源の保護計画を策定したり、また、動植物・生態系の保護に関する民間支援を促進していくことです。
- 林業部門の変遷(植林地増加の背景)
1974年にチリは、国家的な森林経営・管理戦略を施行し、政府の林業における関与を削減しました。この戦略により、政府の役割を、1)林業セクター関連法の管理、2)民間による林業関連活動の促進、3)SNASPEのもとで保護された地域やその他の土地の管理という、3分野に制限しました。
この新しいフレームワークのなかで、林業部門は民営化(森林の所有と政府経営の林業関連産業の生産能力を民間セクターへ移行)され、植林補助金プログラムが設立されました。
このプログラムにより、植林地(主にラジアータ松)が劇的に増え、それに伴って、チリに主要林産物の一つであるパルプやセルロースの生産も増加しました。また、民営化により林業界の構造も変化し、様々な社会問題も起こっています。
- 民営化による変化
また、こういった変化が起こっているのと同時期に、林産関連企業の整理統合が図られ、結果、1989年にMatte Holding と Angelini という2つの持株会社が、植林地経営の39.6パーセント、主にアジア市場向けの林産物輸出の68.9パーセントを占めるようになりました。この2つの会社は現在でも植林地の大部分を所有しています。林業部門の民営化により、多くの原生林も民間所有になりましたが、現在、チリある1300万ヘクタールの原生林のうち、2〜3パーセントが9つの林業関連企業によって所有されており、残りが小規模な土地所有者によって管理されています。
(企業名と各企業の原生林所有面積については、下期の表参照 −英語本文の32ページより抜粋)
主な原生林所有会社名 Surface Area (Ha) Adm. Region Forestal Savia (Formally called Trillium) 103,000 XII Forestal Mininco 70,000 VIII and IX Forestal Milalemu 40,000 VIII and IX Soc. Agricola Alicahue 20,000 ― Forestal Anchile (大王製紙の現地子会社) 20,000 X Forestal Los Lagos 20,000 X Soc. Agricola y Gananadera San Lucas Ltda. 15, 728 XII Inversiones Emasil 10,000 X Forestal Taquihue 6,700 X TOTAL 305,428
林業部門の民営化により、森林の土地所有が大企業に移行したわけですが、これはまた、いろいろな社会問題を引き起こしています。過疎化(特に植林が行なわれている地域で顕著)が起こり、住宅、病院、学校は空家となり、町はゴーストタウン化する一方で、大部分の人々は都市へ移住したり、場合によっては、主要道路付近にある政府所有の土地に違法に定住したりしています。
さらに、森林の土地所有の民営化に関連して、新しい土地所有者と先住民の間で問題が起こっています。
先住民は「先住民のための開発委員会」(the National Commission for Indigenous Development)によって施行されている、現行政策の枠組みの中で、政府から土地所有権を保証されています。この土地の大部分は森林で覆われており、政府は先住民のための開発という目的で、森林を林業関連企業から買い上げています。
しかし、この政策が施行されているにもかかわらず、先住民と民間企業あるいはその他先住民以外の土地所有者の間で深刻な軋轢が生じています。
先住民グループが先祖伝来の土地と主張しているにもかかわらず、彼らの森が民間企業やその他先住民以外の土地所有者によって植林地へと転換されているからです。
- 森林に関する法律と違法伐採
- 「1931年森林法」
現在のチリの森林法は1931年から施行されています。この「1931年森林法」は、近代的な環境法の主要項目 ― 森林破壊を防ぐための規範やその為の刺激材料(例えば原生林資源の持続可能な利用促進・木材認証制度への参加等)― には欠けてはいますが、最初の、森林保護を目的とした法律です。「1931年森林法」は、森林に悪影響を及ぼすような行為を阻止するため、森林資源の利用を規制したり、ある一定の森林で搾取の手段としての「火」の使用や特定地域での伐採を禁止しています。
また、国立公園・保護区の設立に関しても規制を設けています。いままで改正も加えられましたが、現在、実際に法律が守られているのはほんの一部だけです。
701法は、原生林・植林地での伐採や森林資源の利用に関する運用計画を義務付けたり、伐採許可や伐採権、違法行為に対する制裁等を規定していますが、その他に、この法律は造林(商業的価値のある樹木種を使用する植林)への補助金も定めており、再生された森林の面積に応じ、補助金が与えられ、減税措置も行なわれます。この法律が施行された結果、植林地を基本とする森林経営が増え、同時に、いろいろな環境問題・社会問題も生じています。
*701法が植林地造成を加速させた主な要因ですが、その他にも、幾つか二次的な要因があります。原生林に関する誤った定義、原生林の真の価値に対する理解不足、また、チリという国自身に、原生林やその生物多様性の保護を促すような経済的・社会的な動機付けがないことも植林地の増加につながっています。
(原生林に関する定義 ---- 原生林の二次林の多くは、経済価値のない低木(shrub)とみなされる為、皆伐し、ラジアータ松やユーカリなど外来種の植林地への転換が可能となっています)(CODEFF,1996)
- 違法伐採
- 違法伐採事例
チリでは、CONAFからの事前の認可が無ければ、原生林や植林地で伐採をすることはできません。この認可を得るには、森林の運用目的・伐採の期限・伐採法を含む運用計画が認められなければなりません。第9・10行政地区の27の行政区を対象に行なわれたCODEFFの調査によると(Fernandez, 1993)、伐採に関する主な違法行為は、
1)認可された運用計画証が無いのに伐採をしている
2)運用計画証に述べてある事柄を履行していない
でした。
違法伐採はチリでも深刻な問題ですが、いろいろなことが要因になっています。
- 違法伐採の取締りが緩く、罰金の設定もあいまいなため。(罰金額の設定に際して、個人的・政治的影響力を受けやすく、そのため、額が低くおさえられてしまい、違法伐採の抑止力にはなっていません。)
- 規範や規制を施行しなければならない政府機関の資金不足。
- 森林経営に携わる人々とチリ社会全体が、原生林の生態系について、価値やプロセスをよく知らないこと、また理解していないこと。
- さらに、森林法の個所でふれましたが、現法律は森林保護よりも森林資源の搾取に重点を置いていて、森林管理と持続維持可能な森林資源の利用を含む森林保護を促進する誘因は含んでいないこと。
- 原生林での持続維持可能な管理を行なうのに必要な資金が足りないこと。
(公的補助金としてこの資金を土地所有者に与えるべく、チリ政府は「原生林再生とその促進」という名の法案をつくりましたが、立案から10年たった今でも、利害関係者の意見が一致しないため、まだ法律にはなっていません。)
- チリの森林保護はthe National System of Protected Wildlands (SNASPE) (国家自然保護システム) というシステムに含まれることにより、保護指定林になりますが、このシステムは原生林を保護するのに十分に機能していません。
現在の保護されている原生林の面積も行政区によってかなりばらつきがあり、チリの多岐にわたる森林種を均等に保護しているわけではありません。保護林の84パーセントは、人口が少なく、林業関連の産業開発が殆ど行なわれていない、第11・12行政地区に集中しており、他の行政区においては、わずかな面積の原生林しか保護の対象になっていません。
SNASPE は、原生林が残りわずかとなっている、あるいは原生林破壊がかなり進んでいるような、いわば早急に保護を必要とする地域を保護林に含んでいません。SNASPEは、保護を必要とする、チリ全体の動植物種・生態系のほんの一部しか保護していないのです。
このようにSNASPEがうまく機能していない理由は、チリの森林の大部分が個人所有であり、SNASPE だけで、長期的な森林保護を図ろうとしても不十分だからです。
政府による土地購入のための資金は限られていますが、個人の土地所有者は土地の値段を吊り上げる一方で、そのために、多くの場合、土地の値段が高すぎて、政府が購入できない状態です。
このように、政府による原生林保護には限りがあるため、原生林保護において民間部門からの積極的な参加も必要とされています。
- まとめ
- チリの生物多様性を支える原生林の32パーセントは多くの樹木種を含む、チリ固有の種が多数、生息・自生しているフロンティア・フォレストです。
その価値の高さにもかかわらず、フロンティア・フォレストを含む原生林の多くが、植林地に転換されたり、道路建設などその他の産業化の影響で分断され、原生林は減少の一途をたどっています。
原生林の劣化及び減少は、チリの政治的・経済的・文化的側面が複雑に絡み合って引き起こされているものの、持続維持可能な形で原生林を保護し、原生林の資源を利用するには、主要な土地所有者である民間セクターが参加し、中心的な役割を担うことが重要です。
また、原生林保護に関する規定を含む現行法を適用し実施するにあたっては、チリ政府の役割も欠かせません。政府は、国民の支持を得て、チリの自然遺産を保護することに責任があるのです。